年季の入った、しかし落ち着きのある力強い老人の声が響いた。
「二千五百万」
老紳士が口を開くと、会場の全員が彼の方を見つめた。
しばらくの沈黙の後、スタッフは他に値を上げる人がいるか尋ねた。
誰も応答しなかった。そもそも、このようなピンクダイヤモンドにこれほどの大金を使う準備をしている人などいなかった。
三度の確認の後、他の入札者がいないことを確認し、最後のハンマーが下り、このピンクダイヤモンドは橋本おじいさんのものとなった。
「このピンクダイヤモンドは橋本おじいさんのものとなりました」とスタッフは告げた。
「私の助手に精算させますが、このダイヤモンドを後ろの角に座っているあの若い女性に贈ってください。このダイヤモンドは彼女に相応しい」
橋本おじいさんのこの言葉に、全員が一斉に後ろを振り向いた。
確かに、角には若い女性が座っていた。
しかも、今日の会場に来ている唯一の若い女性——佐藤和音だった。
参加者たちは目を見開いて佐藤和音を見つめた。
皆の表情が驚くほど一致していた。
困惑、驚き、そして理解できない様子。
なぜ、橋本おじいさんは何千万円もするピンクダイヤモンドを佐藤和音に贈るのか?
この二人には何の関係もないはずなのに!
しかも、こんな高価な贈り物は、決して小さな話ではない!
山田燕はあまりの驚きに言葉を失った。
頭をひねっても、この関係が理解できなかった。
こんなことがあり得るのか。
橋本朗おじいさんがこんな高価な贈り物を佐藤和音に?
会場にいた千葉夫人も驚き、急いでスタッフに確認するよう合図した。
スタッフは慌てて橋本おじいさんに確認した。「橋本おじいさん、このピンクダイヤモンドを、あちらの白い服を着た若い女性に贈るということでよろしいでしょうか?」
「そうだ。会場の中で、このピンクダイヤモンドに最も相応しい雰囲気を持っているのは彼女だけだ」
橋本おじいさんの返答は落ち着いていて穏やかだったが、他の人々にとっては晴天の霹靂のようだった。
スタッフは急いでピンクダイヤモンドを佐藤和音のもとへ運ばせた。
橋本おじいさんはまだ支払いを済ませていなかったが、相手が橋本おじいさんである以上、約束を反故にする心配は全くなかった。
ピンクダイヤモンドが佐藤和音の前に置かれた。