年季の入った、しかし落ち着きのある力強い老人の声が響いた。
「二千五百万」
老紳士が口を開くと、会場の全員が彼の方を見つめた。
しばらくの沈黙の後、スタッフは他に値を上げる人がいるか尋ねた。
誰も応答しなかった。そもそも、このようなピンクダイヤモンドにこれほどの大金を使う準備をしている人などいなかった。
三度の確認の後、他の入札者がいないことを確認し、最後のハンマーが下り、このピンクダイヤモンドは橋本おじいさんのものとなった。
「このピンクダイヤモンドは橋本おじいさんのものとなりました」とスタッフは告げた。
「私の助手に精算させますが、このダイヤモンドを後ろの角に座っているあの若い女性に贈ってください。このダイヤモンドは彼女に相応しい」
橋本おじいさんのこの言葉に、全員が一斉に後ろを振り向いた。