佐藤正志は反論する理由が見つからず、一人で戻るしかなかった。
佐藤直樹の目が沈んだ。
佐藤正志は眉をひそめたが、結局佐藤直樹を慰める言葉は口にしなかった。
兄弟二人が佐藤邸に戻った時、佐藤のパパと佐藤のママはまだ休んでいなかった。彼らは二人の帰りを待っていたのだ。
結局、佐藤正志は良い知らせを持ち帰ることができなかった。
「パパ、ママ、学校に戻りたい」
佐藤直樹は帰り道でずっと考えた末、ついに決断を下した。
「もうかなり長い間休んでいるんだから、あと数日くらい」と佐藤正志は重々しく言った。
佐藤直樹は首を振った。「学校で起きたことは分かった。すべては私が引き起こしたことだ。誰が情報を広めたにせよ、発端は私にある。妹は私のせいで皆に誤解され、罵られている」
佐藤直樹は今自分に何ができるのか分からなかった。
しかし少なくともこの件については、佐藤和音に説明をする必要があった。
佐藤賢治と妻の岡本治美は視線を交わし、そして佐藤直樹の提案に同意した:
「じゃあ、退院手続きが済んだら学校に戻りなさい」
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両親の同意を得た翌日、佐藤正志は研究所へ佐藤直樹の退院手続きに行った。
後期のリハビリ訓練は佐藤直樹が自宅でできる。定期的に研究所に来て検査を受ければいい。
佐藤正志は意外にも研究所で佐藤和音に出会った。
佐藤和音が研究所の藤田安広や奥野実里と仲が良いことを知っていたし、佐藤おばあさんからも奥野実里がよく佐藤和音を遊びに連れて行くと聞いていた。
だから、ここで佐藤和音を見かけても特に驚きはしなかった。
もうすぐ昼食時で、研究所のメンバーは皆手を止めて、研究所の食堂で休憩していた。
研究メンバーの人数はそれほど多くないため、研究所の食堂は家庭的な雰囲気で、隣にはオープンキッチンがあり、研究所のシェフがここで皆の食事を用意していた。
それぞれの好みに合わせて個人対応もしていた。
佐藤正志が佐藤和音を見かけた時、彼女はオープンキッチンで何かを忙しく作っていた。
佐藤正志は佐藤和音に近づき、彼女が寿司を作っているのを発見した。
白くてふんわりとしたご飯を、同じように白くて柔らかな小さな手で握っていた。
佐藤正志はしばらくの間、静かに横で見ていた。
佐藤和音は次々と寿司を作り、それらを皿の上に整然と並べていった。