第268章 撮影所での出会い（2）

週末、佐藤明人は佐藤和音を撮影スタジオに連れて行き、新曲のMV撮影が始まった。

あいにく、原詩織も今日同じ映像制作会社にいた。

ジュピターの新曲MVを請け負った映像制作会社と、原詩織が今回撮影する広告を請け負った会社が、たまたま同じだったのだ。

そのため、彼らは同じ映像制作会社に居合わせることになった。

これは純粋な偶然だった。

同じ会社とはいえ、両者の撮影は別々に行われ、お互いに影響することはなかった。

トイレに向かう途中、佐藤和音と原詩織が向かい合わせで出会った。

佐藤和音を見た原詩織は足を止めた。

「佐藤和音、私が何かするとすぐに真似しないといけないの？なぜそんなに私と争うの？」原詩織は佐藤和音に詰め寄った。

彼女には佐藤和音がなぜそんなことをするのか理解できなかった。

以前から彼女と佐藤直樹が何かすると、佐藤和音はいつも追随していた。

前に彼女が化学コンクールに参加した時も、和音も応募して、家族の背景を利用して不正に賞を獲得した。

佐藤和音は原詩織を一瞥し、向きを変えて彼女を避けようとした。

彼女は原詩織と衝突したくなかった。

原詩織がここで広告撮影をしていると知っていれば、今日は来なかっただろう。

原詩織が広告の仕事を受けたことについて、佐藤和音は知っていた。原作にその描写があったからだ。

原作の設定では、原詩織は2年前に裕福な家の若夫人を救ったことがあり、その若夫人は芸能界に繋がりがあり、豊富な人脈を持っていた。

その命の恩に報いるため、若夫人は原詩織のために道を開き、芸能界での発展を支援した。

佐藤和音は原作の展開に干渉するつもりはなく、原詩織と千葉佳津の関係にも、原詩織のキャリアにも介入したくなかった。

原詩織は手を伸ばして佐藤和音の行く手を遮った：

「佐藤和音、私の母はもう佐藤家の使用人じゃないわ。私たちの間にはもう何の接点もないのに、なぜまだ私にまとわりつくの？」

以前は母が佐藤家で働いていたため、佐藤和音の意地悪や侮辱的な言葉に耐えてきた。

しかし今は佐藤和音の嫌がらせを我慢する理由はなかった。

「考えすぎよ」佐藤和音は無表情で言った。

「私もそう願いたいわ」原詩織はこれら全てが偶然だとは信じられなかった。

佐藤和音はもう説明せず、原詩織の遮る手を見て「どいて」と言った。