第267章 撮影スタジオでの出会い(1)

高校三年生の特進クラスの生徒たちは、クラスメイトの佐藤直樹と原詩織の関係が冷え切っていることを感じ取っていた。

しかし、プライベートな問題なので、ほとんどの生徒は深く追及しようとはしなかった。

好奇心の強い江口沙央梨だけが、原詩織に執着して尋ねていた。

原詩織は、ただ長い間会っていないから関係が薄くなっただけだと言った。

江口沙央梨は更に追及した:「昨日SNSに投稿した写真は本当なの?本当に広告の撮影に行ったの?」

原詩織は昨日SNSにこう投稿していた:【初めてプロのカメラの前に立って、やっぱり少し緊張する。撮影が順調に進みますように。】

「うん。」

原詩織は江口沙央梨に、これは以前自分が助けた夫婦が手配してくれたことだとは話さなかった。

原詩織は見た目がよく、容姿が際立っていて、とても映像映りがよかった。

金山若夫人には人脈と資源があり、命の恩人への恩返しとして、普通の広告の仕事を紹介してくれたのだ。

広告の中には、クリエイティブ重視で、有名人を起用せず、イメージに合う人を探すだけのものもある。

そして原詩織はそのようなチャンスを掴んだのだ。

金山若夫人は原詩織に、この広告を撮影すれば、彼女にとってはかなり高額な広告料を得られ、自分の力で母親との困難を解決できるだけでなく、芸能界に進出するチャンスも手に入れられると告げた。

もちろん、それはただのチャンスに過ぎない。

芸能界は深い。一本の広告で成功できる確率は極めて低い。

原詩織から肯定的な返事を得た江口沙央梨は、羨ましそうな表情を浮かべた:「詩織、すごいじゃない!まだ高校生なのに!他の人は必死になって、練習生やエキストラをやって、何年もかかってようやく広告の仕事が来るのに!」

「私はただ運が良かっただけよ。」原詩織は平然とした様子で、一本の広告を撮影したことで得意になることはなかった。

「そんなこと言わないで、運が良かったって言うけど、どうして他の人にはそんな運が無いの?私が思うに、運も一部だけど、やっぱりあなた自身の素質が大きいわ。」

江口沙央梨は原詩織を褒め続けた。

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佐藤家本邸で、佐藤明人は佐藤和音の行く手を遮った。

佐藤和音が避けようとしても、彼は執拗に追いかけてきた。