第265章 蘭花展(4)

「年を取ると、多くのことが気にならなくなるものだ。運命にあることは必ずある、無理に求める必要はない」

佐藤おじいさんは自分が突然悟りを開いたかのように、金山社長に禅の理を語り始めた。

金山社長が佐藤おじいさんを見習うべきかと感心していた時。

スタッフが近づいてきて、佐藤おじいさんに言った。「佐藤おじいさん、このランの販売はお考えにならないのでしょうか?すでに何人もの方が展示場に極めて高額での購入を希望されているのですが」

「売らない、売らない。いくらでも売らないよ!」

佐藤おじいさんは断固とした態度を示し、スタッフは何も成果を得られずに引き下がるしかなかった。

金山社長は目を見開いて「佐藤じじい、どういうことだ?この新品種のランはあんたが持ってきたのか?」

佐藤おじいさんは誇らしげに顔を上げ、顔に自慢の表情を浮かべた。「そうだよ、世界に一つしかないこの一株は、私のものだ!」

「どこで手に入れたんだ?」金山社長は急いで尋ねた。好奇心が彼を飲み込んでいた。

「教えないよ!」

「いや佐藤じじい、それは酷すぎるだろう。何年も花の仲間としてやってきたのに、新品種の極上ランを手に入れたのに一言も教えてくれないなんて」

「教えたらもっと嫉妬するだけじゃないか?」

「うっ……」金山社長は佐藤じじいの言葉にもっともな理があると気づいた。今でもすでに嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。

好奇心を抱いていたのは金山社長だけではなく、佐藤賢治たちも同様だった。

佐藤賢治は我慢できずに父親に尋ねた。「お父さん、いつからこの研究に投資していたの?」

一般的に、新品種の育成には専門の研究者による試験が必要だ。

佐藤おじいさんは横で困惑した表情を浮かべる佐藤賢治、岡本治美、佐藤正志、佐藤直樹を見て、ゆっくりと答えた。

「かなり前からだよ。十五年前から投資を始めて、これまでにかなりの金を使った」

「どうして今まで一度も聞いたことがないんだ?」これほど長い間、彼らは一切の情報も聞いていなかった。父はこれほどまでに秘密にしていたのか?

「私はお前の父親だ。何をするにも一々お前に報告する必要があるのか?」

佐藤賢治は佐藤おじいさんの一言で黙り込んだ。

佐藤賢治はもう質問できなくなり、その後ラン展が終わると、彼らはおじいさんと一緒に近くの中華料理店で食事をした。