「そうだ佐藤じじい、後でとても珍しい蘭の展示があるって聞いたんだけど、今日のメインイベントらしいよ。興味ないかい?」珍しい蘭の話になると、金山社長は再び興奮し始めた。
「興味ないね」
「それはあなたらしくないな。いつもは一番気にしているじゃないか?」
今日の佐藤おじいさんは少し様子が違っていた。
金山社長だけでなく、傍らにいた佐藤賢治と岡本治美夫妻も不思議に思った。
おじいさんがどれほど蘭が好きかは彼らもよく知っていた。珍しい品種や新品種が出てくれば、必ず確かめに行くのが常だった。
「買う気がないだけで、興味がないとは言っていないだろう」佐藤おじいさんは言葉尻を捉えた。
それに何か違いがあるのだろうか?金山社長には理解できなかった。
佐藤おじいさんは金山社長の困惑した様子を見て、少し得意げな表情を浮かべた。