第261章 原おばさんが解雇される（4）

佐藤直樹のこの反応は針のように、原詩織の心を刺した。

もし以前は推測だけだったとしても、今では完全に確信できた。佐藤直樹との関係は断ち切られたのだと。

そして、その断絶の理由を佐藤直樹は一言も言わなかった。質問も口論もなかった。

このように音もなく、一方的に彼女への死刑を宣告したのだ。

原詩織は骨の髄まで誇り高い性格だった。もし佐藤直樹の態度が変わっただけなら、自分から頭を下げて理由を尋ねたりはしなかっただろう。

しかし今日は彼女一人の問題ではなく、母親のことも関係していた。

だから原詩織は、それまでの態度を一変させ、突然車の窓際に近づいた：

「直樹、何があったの？少なくとも理由だけでも教えて。」

「僕にも分からない。」佐藤直樹も、彼女たちが荷物を持って家の前に立っているのを見て初めて、佐藤家から出て行くように言われたことを知った。

「直樹、私たち二年以上の付き合いよ。これで私との連絡を絶つの？理由すら教えてくれないの？」

「二年以上の付き合い...」佐藤直樹はその言葉を繰り返した。「原詩織、言っただろう。君と君のお母さんのことは知らない。うちの使用人の件には関わらない。」

使用人の件。

その一言で原詩織は最も痛烈な現実に引き戻された。

使用人。つまり佐藤直樹の心の中で、自分はやはり彼の家の使用人の娘でしかなかったのだ。

佐藤家で、少なくとも彼だけは違うと思っていたのに。

「分かったわ。」原詩織は強情に、少しの悲しみも見せまいとした。

使用人の娘にだって、プライドはある。

原詩織は振り返り、母親の手を引いて立ち去った。

「お母さん、行きましょう！」

「詩織...」原おばさんは娘に引っ張られながら、未練がましく振り返った。まだご主人様とお奥様の帰りを待っていなかった。まだ完全には諦めきれていなかった。

「お母さん、もう言わないで。行きましょう。」原詩織は断固として言った。

佐藤家を出ても、生きていける。

少し苦しい生活になるかもしれないけれど、少なくとも尊厳を持って生きられる。

原詩織と原おばさんは十メートルほど歩いただけだった。大量の荷物があり、徒歩では遠くまで行けない。車が来るのを待つしかなかった。

原詩織が佐藤邸の正門を振り返った時、佐藤直樹の車はすでに佐藤邸に入っており、大きな鉄門が再び閉まった。