「和音の性格は衝動的で怒りっぽく、少し我儘なところもありますが、最低限の善悪の価値観は持っています。人を害そうという心はありません。どうしてそんな風に彼女を断罪できるのですか。たとえ直樹が言ったことだとしても、たとえ直樹が嘘をつくはずがない子だとしても……」
佐藤一輝はまだ佐藤和音のために弁解しようとした。
「そうだね、その通りだ」佐藤正志は過ちを認めた。「この件は私に最大の責任がある。両親、特に母さんを責めないでくれ。母さんは優しい性格で、直樹が怪我をしてから、すっかり取り乱してしまったんだ」
「誰を責めても意味がない」佐藤一輝は悲痛な声で低く言った。「もっと早く私に教えるべきだった」
佐藤正志は一瞬黙り込んだ。
最初は事態がそうなっているとは知らなかった時、彼を呼び戻しても男が一人増えるだけだと思って黙っていた。