第300章 隼人兄に師匠を探す(2)

金山若夫人はこの一株の蘭を買うために数百万円を払うつもりでした。

しかし、魔術師を紹介することは、理論的には価値がないのです。

紹介は成功を保証するものではなく、はっきり言えば、数百万円で会える機会を買うだけです。

投資の神様との昼食会のオークションなら、少なくとも一食の時間を過ごせることは保証されています。

これは何の保証もありません。

【一流の魔術師はお金では手に入りません。】

佐藤和音が必要としているのは人脈です。

紹介してくれる人が必要なのです。

条件に合う人に出会える可能性は低いですが、佐藤和音は気にしていません。この蘭を手放すことを急いでいないのです。

他にも適切な魔術師候補を探す方法があります。

金山若夫人はしばらく考え込んでから:【では、藤原さん、少々お待ちください。時間をいただいて、人に連絡を取ってみます。その間、藤原さんにはこの蘭を手放さないでいただきたいのですが。】

【条件を最初に満たした方に蘭をお譲りします。】

佐藤和音は金山若夫人のために取り置きすることを約束しませんでした。

この返事を見た金山若夫人は失望しましたが、仕方ありませんでした。相手の物なので、相手の好きなように売る権利があります。

【分かりました。今すぐ連絡を取ってみます。】

金山若夫人の父は芸能プロダクションの取締役会長で、そのため金山若夫人は芸能界にそれなりの人脈と資源を持っていました。

魔術業界は芸能界には属していませんが、いくらかの接点はあります。

金山若夫人は父親に連絡を取り、意外にも父親は国内トップクラスの魔術師と連絡を取る方法を知っていました。

その魔術師が金山若夫人の頼みを引き受けてくれることをすぐに確認し、金山若夫人は急いで蘭の売り手に連絡を取りました。

【藤原さん、魔術師の松井間弓さんをご紹介できることになりました。いかがでしょうか?】

佐藤和音はこの人物を知っていました。適切な魔術師候補を物色し始めた時点で、既に国内のトップクラスの魔術師について調べており、その中にこの人の情報もありました。

松井間弓は今年四十代で、魔術業界ではベテランの部類に入ります。

彼女の業界での地位と能力は皆に認められています。

そして最も重要なのは、松井間弓はこれまで弟子を取ったことがないということです。