「痛みがあってこそ、夢かどうかわかるんだ」
「夢じゃないよ。わかってる。つねる必要もない」佐藤和音は確信に満ちた口調で佐藤隼人に告げた。
個室では、金山若夫人と松井間弓が驚いた様子で入ってきた二人の子供を見つめていた。
約束していたのは「藤原さん」のはずなのに?
どうして入ってきたのは中学生二人なの?
金山若夫人は優しい表情で二人に尋ねた。「お二人は部屋を間違えていませんか?」
佐藤和音は首を振った。「あなたと連絡を取っていたのは、私です」
金山若夫人は驚いた様子で尋ねた。「藤原さんとはどういうご関係なの?」
「藤原さんなんていません。私です」佐藤和音は断言した。
この答えは意外ではあったが、不可能というわけではなかった。ネットを通じてのやり取りだったため、金山若夫人は蘭を売る人が実際にどんな人物なのか知らなかったのだ。