彼女は一目で、この少年が彼女に対して抱いている崇拝の念を見抜くことができた。
もし女の子が弟子入りを望んでいると言うなら、松井間弓は疑わしく思うだろうが、この少年が弟子入りを望んでいるというなら、信じられた。
金山若夫人は佐藤和音に説明した。「あなたが提示した条件は紹介だけです。成功するかどうかは、私の方では責任を持てません。」
金山若夫人は目の前の少女を見つめ、その真剣な様子に少し心が痛んだ。
そして松井間弓の方を振り向き、彼女がどう考えているのか気になった。
彼女の知る限り、松井間弓は長年弟子を取っていない。簡単に少年を入門弟子として受け入れるとは思えなかった。
金山若夫人にもどうすることもできず、松井間弓に弟子を取るよう強制することもできなかった。
松井間弓は佐藤隼人の前に歩み寄り、いくつかの質問を始めた。
まず、いつからマジックに触れ始めたのか、なぜマジックが好きなのかを尋ねた。
そしてマジックに関する質問を続けた。
その後、佐藤隼人に彼が知っている簡単なマジックをいくつか披露させた。
一連のやり取りを通じて、松井間弓は意外な思いを抱いた。
今日ここに来たのは完全に人情のためだった。金山若夫人の父親に恩があり、頼まれれば断れなかった。
弟子を取ることについては、来る前は本当に考えていなかった。
長年探してきても適任者が見つからなかったのに、このような偶然で出会えるとは思っていなかった。
しかし、予想に反して、この少年が意外に気に入った。
マジックに対する純粋な情熱と、真摯な姿勢が好ましかった。
この二点は彼女が最も重視することで、才能以上に大切なものだった。
もちろん、この少年には確かに才能もあった。良い素質を持っており、しっかり磨けば大成する可能性は十分にあった。
松井間弓は佐藤隼人に言った。「では、今日はここまでにしましょう。連絡先を交換して、後日改めて連絡を取り、機会があればもう少し詳しく話し合いましょう。」
松井間弓は佐藤隼人を弟子として直接受け入れることはなかった。
しかし、この行動だけでも金山若夫人を驚かせるものだった。
これは松井間弓がこの少年を良く評価していることを示していた。直接断らずに連絡を取り続け、さらなる審査を行うということは、松井間弓の弟子になる可能性がまだあるということだった。