彼女は原詩織がエンターテインメント業界に進出しようとしているなら、服装やスタイリングに気を配る必要があることを知っていましたが、原詩織にはそんな高級ブランドの服を買うだけの余裕はないはずでした。
金山若夫人は原詩織の自尊心を傷つけたくなかったので、このような回り道をして服を贈ろうと考えました。
原詩織は足を止めました。さっきの人は...佐藤和音?
佐藤和音に間違いありません。彼女は見間違えてはいませんでした。
なぜ佐藤和音が金山若夫人と一緒にいるの?
原詩織の心の底から不吉な予感が湧き上がってきました。
何とも言えない不安が一気に彼女を襲いました。
悪い方向に考えたくはありませんでしたが、これまでに起きた様々なことが、そう考えざるを得ない状況でした。
「詩織ちゃん、来たのね?」原詩織を見た金山若夫人は、満面の笑みで彼女の方へ歩み寄りました。