第304章 みんな一凌と契約したがる(2)

そこで、みんなはまだ名前も知らないこのMVのヒロインを制作陣に推薦し始めた。原作ファンの心の中で最もイメージに合う人物だと思ったからだ。

ネット上で噂が広がり、栄光高校の生徒たちも盛り上がっていた。

以前は佐藤和音をどれほど嫌っていたとしても、今や彐女はMVに出演し、ドラマにも出演することになり、学校の名誉を高めているように感じられた。

親戚や友人に話すときも、「あの子は私たちのクラスメイトなんだ!」と誇らしげに言えるようになった。

そのため、ネット上で佐藤和音がその役を演じるべきだという提案を見たとき、栄光高校の生徒たちは次々とコメントを残して支持を表明した。

学校の掲示板では、佐藤和音が新ドラマの役を獲得できるよう、みんなで協力しようと呼びかける生徒もいた。

江口沙央梨はそれらの投稿やコメントを見て、非常に不満そうだった。「この人たち、どうなってるの?前まで佐藤和音のことを嫌って悪口を言ってたのに、今じゃ風見鶏みたいに簡単に態度を変えて。」

江口沙央梨は言い終わって隣の原詩織の表情を見ると、彼女の顔色が悪いことに気づいた。

「詩織、この件についてどう思う?」

「気にしないで。他人の考えはどうしようもないわ。自分のことだけ考えればいい。人に害を与えなければ、私たちも害を受けることはないわ。」

原詩織は最後の言葉を言い終えた時、ショッピングモールで佐藤和音を見かけた光景が突然目の前に浮かんだ。

本当に人に害を与えていないのだろうか?原詩織にもわからなかった。

教室で、佐藤直樹はみんなが佐藤和音のことを議論しているのを見て、複雑な気持ちになった。

以前なら、彼はきっと彼らを制止していただろう。

妹について過度な想像をすることを許さなかったはずだ。

しかし今は、そんなことは言えない。

妹が何を考えているのか、芸能界に入りたいと思っているのかどうかもわからない。

実際、彼は妹が芸能界に入ることを望んでいなかった。そこには多くの枕営業があると聞いていたから……

でも今は、どうやって聞けばいいのかもわからない。

佐藤直樹は机に伏せ、怪我をしていない方の腕を枕にして、自分の感情も腕の中に埋めた。

佐藤和音も大井心から聞いて初めてこのことを知った。