第309章 反転で原詩織を打ちのめす(1)

江口沙央梨が話し終えると、みんなが驚いた目で佐藤和音を見つめていた。

大井心は佐藤和音の手を引いて、その場から離れようとした。

二人とも口論が得意な方ではなく、二人を合わせても江口沙央梨一人には敵わないだろう。

佐藤和音は動かなかった。彼女は江口沙央梨の言葉から有用な情報を得たばかりだった。

原詩織の役が降ろされ、彼女たちは和音がやったと疑っているのだ。

佐藤和音は携帯を取り出し、以前芸能界に誘うと言っていた人を探し出し、メッセージを送った。

相手はすぐに返信してきた:【了解、そんな些細なこと、すぐに片付けておくよ。】

佐藤和音がメッセージを送っている間、江口沙央梨は和音に態度を示すよう迫った:

「佐藤和音、今は黙ったふりをするつもり?せめて謝罪くらいしたら?」

「謝罪はしない」佐藤和音は断固として拒否した。

佐藤直樹が群衆を掻き分けて駆けつけてきた。昼食時から和音の方を見ていたのだ。

「江口沙央梨、何を言っているんだ?」

佐藤直樹は眉をひそめ、表情は良くなかった。

その端正な顔に暗い影が差していた。

江口沙央梨が最初に言った言葉は聞いていなかったが、後半の和音への詰問は聞こえていた。

江口沙央梨は佐藤直樹を見た瞬間、少し後悔した。

自分の言葉に間違いはないと思っていたが、佐藤直樹がいる状況でこんなことをするのは、確かに軽率だった。

「私は適当なことを言っているわけじゃないわ。直樹、見て、詩織が泣いているでしょう。彼女はいつも強い子なのに、本当に辛くなければこんな風にはならないはず。友達として、彼女がこんなに辛そうなのを見るのが耐えられないの。ただ彼女のために正義を求めたいだけよ」

江口沙央梨は自分の行動を説明した。

彼女は意図的に佐藤和音と対立しようとしたわけではなく、全ては友達のためだった。

佐藤直樹の眉間の皺はさらに深くなり、原詩織の方を向いた。

彼女は涙でいっぱいの顔で、目は真っ赤で、悔しさと辛さがその目から伝わってきた。

今回、佐藤直樹は彼女に疑問を投げかけた:「なぜ和音がやったと思うんだ?」