江口沙央梨が話し終えると、みんなが驚いた目で佐藤和音を見つめていた。
大井心は佐藤和音の手を引いて、その場から離れようとした。
二人とも口論が得意な方ではなく、二人を合わせても江口沙央梨一人には敵わないだろう。
佐藤和音は動かなかった。彼女は江口沙央梨の言葉から有用な情報を得たばかりだった。
原詩織の役が降ろされ、彼女たちは和音がやったと疑っているのだ。
佐藤和音は携帯を取り出し、以前芸能界に誘うと言っていた人を探し出し、メッセージを送った。
相手はすぐに返信してきた:【了解、そんな些細なこと、すぐに片付けておくよ。】
佐藤和音がメッセージを送っている間、江口沙央梨は和音に態度を示すよう迫った:
「佐藤和音、今は黙ったふりをするつもり?せめて謝罪くらいしたら?」
「謝罪はしない」佐藤和音は断固として拒否した。
佐藤直樹が群衆を掻き分けて駆けつけてきた。昼食時から和音の方を見ていたのだ。
「江口沙央梨、何を言っているんだ?」
佐藤直樹は眉をひそめ、表情は良くなかった。
その端正な顔に暗い影が差していた。
江口沙央梨が最初に言った言葉は聞いていなかったが、後半の和音への詰問は聞こえていた。
江口沙央梨は佐藤直樹を見た瞬間、少し後悔した。
自分の言葉に間違いはないと思っていたが、佐藤直樹がいる状況でこんなことをするのは、確かに軽率だった。
「私は適当なことを言っているわけじゃないわ。直樹、見て、詩織が泣いているでしょう。彼女はいつも強い子なのに、本当に辛くなければこんな風にはならないはず。友達として、彼女がこんなに辛そうなのを見るのが耐えられないの。ただ彼女のために正義を求めたいだけよ」
江口沙央梨は自分の行動を説明した。
彼女は意図的に佐藤和音と対立しようとしたわけではなく、全ては友達のためだった。
佐藤直樹の眉間の皺はさらに深くなり、原詩織の方を向いた。
彼女は涙でいっぱいの顔で、目は真っ赤で、悔しさと辛さがその目から伝わってきた。
今回、佐藤直樹は彼女に疑問を投げかけた:「なぜ和音がやったと思うんだ?」