すぐに菊地おじいさんは質問する気も失せてしまった。
上杉望の方を向いて怒って問いただした。「どうしてこんなことになったんだ?」
上杉望は俯いて、息をするのも怖がっていた。
上杉望も心の中では辛かった。秋次おじいさんが協力してくれないから、菊地おじいさんから言いつけられた仕事をごまかすためにこんなことしかできなかったのだ。
和音様以外の女性は、秋次おじいさんに近づくことさえ許されなかった。
秋次おじいさんが女性たちと親しくしていれば、彼と和音様の写真だけを撮る必要はなかったのに。
「まあいいか」菊地おじいさんもどうすることもできなかった。主な問題は上杉望にあるのではなく、むしろ自分の唯一の孫にあったのだ。
孫がようやく目覚めたと思っていたのに。
まさか水の泡になるとは。数日間の喜びも無駄になってしまった。
そして菊地おじいさんは佐藤和音に言った。「もういいよ、お嬢さん。帰っていいよ。」
佐藤和音も何があったのか追及せず、菊地おじいさんが帰れと言ったので帰った。
佐藤和音が去ると、菊地おじいさんは菊地秋次の鼻先を指差して小言を言い始めた。「このバカ息子め、どうしてちっとも気付かないんだ!何度も言っただろう、恋愛も結婚も早いうちにするべきだって!」
菊地秋次はもう慣れていて、菊地おじいさんの小言を聞きながら眠くなってきた。
菊地おじいさんはそんな菊地秋次を見て、気持ちが沈んでいった。
一時的に小言を諦めて、上杉晴夏を隣の部屋に呼んだ。
上杉晴夏は菊地おじいさんの後ろについて、恭しく従った。
「座りなさい」菊地おじいさんが言うまで、上杉晴夏は座ることができなかった。
座っても、上杉晴夏は少しも気を抜くことができなかった。
「この数日間、秋次のことで面倒をかけたね」菊地おじいさんは上杉晴夏に感謝の意を表した。
「菊地おじいさん、そんな。面倒なんてとんでもありません」
「面倒じゃないなんて言うな。私は君より彼のことをよく知っているんだ」菊地おじいさんは長いため息をついた。「私が彼に結婚を急かすのは、ただ菊地家の跡継ぎが欲しいからだと思っているだろう?彼が死んだら、菊地家の血筋が途絶えることを心配しているんだと」
上杉晴夏は返事をする勇気がなく、背筋を伸ばして菊地おじいさんの話を聞いていた。