第320章 菊地秋次の慕う者

原詩織は佐藤和音とのこれ以上の関わりを避けたかった。

今日は金山若夫人と一緒にパーティーに参加し、佐藤和音とは可能な限り距離を置きたかった。

原詩織は視線を戻し、目の前の奥様方や若い女性たちに微笑みかけた。

彼女は落ち着いた態度で礼儀正しく振る舞い、金山若夫人が傍で彼女のことを話してくれたこともあり、皆の印象は良好だった。

しばらくすると、今日の主役である千葉佳津が皆の前に姿を現した。

ライトグレーのスーツを着こなし、エリート風の装いをした千葉佳津を見て、皆は心の中でため息をついた。私生児とはいえ、この容姿と気品は貴族のそれであり、やはり龍は龍を生み、鳳凰は鳳凰を生むというように、千葉家の子供は外で生まれても、それほど見劣りはしないのだと。

千葉佳津の傍らには、若く有能そうな女性が付き添っていた。

ファッショナブルで洗練された装いで、とても気品があった。

紹介によって、この女性が他でもない千葉佳津の異母妹、東京の千葉家唯一の嫡女である千葉優花だと分かった。

千葉優花は今年十八歳で、千葉佳津より一歳年下だった。

生まれも容姿も一級品だった。

皆の好奇心は一層高まった。

千葉佳津がいなければ、千葉優花が千葉家の唯一の後継者だったはずだ。

今、突然現れた千葉佳津が彼女の後継者の地位を奪ったのだから、常識的に考えれば、彼女と千葉佳津は敵対関係のはずだった。

しかし今日、彼女は千葉佳津と共に登場し、暗に千葉佳津の正統性を認めているかのようだった。

千葉優花が現れると、その場にいた全員の注目が彼女に集まった。

大阪市のこれらの一般的な権力者たちは、東京の千葉家と比べると、はるかに及ばなかった。

千葉優花のようなトップクラスの令嬢の前では、大阪市のこれらの奥様方や若い女性たちは、ただの一般人に過ぎなかった。

あの佐藤和音も、大阪市でのお姫様気取りも、千葉優花の前では物の数ではなかった。

佐藤和音も周囲の騒ぎに気づき、千葉優花の存在に気がついた。

彼女は千葉優花のことを知っていた。原作では、千葉優花の出番は彼女よりも多かったからだ。

厳密に言えば、彼女も原作の敵役であり、そして……

皆の注目が千葉家の兄妹に集まっているとき、新たな来客が到着した。

菊地秋次と上杉望だ。