第370章 原詩織が人気に

東京で菊地家の状況を知らない人はいない。菊地家は大きな家柄で財産も豊かだが、家族には三人の男性しかおらず、三人とも独身だった。

菊地おじいさんが養女を迎えたいと思っているのは、誰もが信じられることだった。

「違う」

千葉優花が上杉望の説明を受け入れる前に、菊地秋次がその説を否定した。

おじいさんは菊地秋次に佐藤和音を養女にしたいという考えを話したことがあったが、彼に否定されていた。

菊地秋次は上杉望の説を否定したが、自身からより明確な答えを出すことはなかった。

菊地秋次は千葉優花にさらなる質問の時間を与えず、直接自分のボディーガードに客を送り出すよう指示した。

ボディーガードが前に出て、菊地秋次と千葉優花の間に立った。

「千葉さん、お帰りください。私どもの若様はお休みになります」

ボディーガードは明らかな嘘をつくのが上手くなっていた。佐藤和音がまだいるのに、菊地秋次がどこで休むというのか。

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原詩織の芸能活動は予想外に成功し、彼女自身もこれほど急速に人気が出るとは思っていなかった。

金山若夫人と山田燕の共同支援のもと、当初女三号だったウェブドラマで主演を勝ち取った。

原作のファンベースがあったため、配信開始とともに人気が急上昇し、一時はネット上で最も話題になったドラマとなった。

そして主演の原詩織は急速に人気を集め、ファン数が爆発的に増加した。

続いて様々な仕事が舞い込んできた。広告、バラエティ番組、新しい作品のオファーなど。

一つの広告で百万円以上のギャラを得られるようになった。

これは以前の原詩織と母親の原恵子には想像もできなかったことだった。

原詩織は今では芸能事務所と契約し、自分のマネージャーとアシスタントもいて、以前と比べて生活は大きく変わった。

原恵子は今では仕事に出る必要もなく、娘の生活の世話に専念すればよくなった。

山田健司は娘が確かに成功してお金を稼ぐようになったのを見て、自分の選択が正しかったと深く感じ、ますます娘に干渉しなくなった。

彼は原詩織が表面上は彼との関係を安定させているように見せながら、裏では離婚訴訟のための証拠集めを急いでいることを知らなかった。

後顧の憂いがなくなり、原詩織の仕事はますます順調になった。

芸能事務所は原詩織のためにリアリティショー番組の出演を決めた。