家から出てきた佐藤浩人はすぐには立ち去らなかった。
彼はガジュマルの木の下まで歩いていき、幹に背をもたせかけて座り込んだ。
微風が顔を撫でる中、彼は目を閉じ、まるで眠っているかのように静かで、表情は穏やかだった。
右手で左手首の数珠をそっと弄っていた。
目の前に浮かんだのは、先ほど出会った佐藤和音の姿だった。
表情は次第に穏やかになっていった。
しかし場面が変わり、山田燕が彼の目の前で棋譜を引き裂く光景が蘇ってきた。
そして背中に熱湯がかかった時の灼熱の痛み、何年経っても、背中のその部分がまだ熱く感じられるかのようだった。
佐藤浩人は突然目を開け、そして立ち上がって屋敷を後にした。
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佐藤おじいさんはその日の夜、佐藤賢治と佐藤正志を書斎に呼び寄せた。
祖父と孫たちは書斎で長い時間話し合った。