第398章 謎の専門家(3)

佐藤一輝が発言を終えた後、楽屋に戻らず、ステージを降りてすぐに佐藤和音の席へと向かった。

先ほどステージにいた時から、観客の中から和音の位置を確認していた。

「和音」佐藤一輝の目元の笑みは、ステージ上の時よりもずっと優しかった。

自然な動作で、佐藤一輝はコートのポケットから透明なプラスチックケースに入った小さなデザートを取り出した。

岡本治美は甘い物だと分かると、呆れたように彼を睨みつけた。

佐藤和音が小さい頃、治美は子供が甘い物を食べすぎるのを心配して、週に200グラムまでと制限していた。

それなのに、この二人の息子たちときたら、毎日のように和音に甘い物を与えていた。

兄たちが和音に内緒で甘い物を持ってきているのを見つけるたびに、治美は怒りつつも諦めて、言うことを聞かない兄たちを厳しく睨むしかなかった。