菊地秋次は本来、千葉家のこのパーティーに参加するつもりはなかった。
しかし、出かける直前に、ふと思いが浮かんだ。
目の前に浮かんだのは、ぎこちなく社交ダンスを踊る少女の姿だった。
それは彼女が初めて踊った時のこと。
その時も千葉家のパーティーだった。
そして彼は不思議と会場に足を運んでいた。
菊地秋次が現れると、パーティー会場の大半の視線が彼に集まった。
彼は何も言わず、目立たない隅っこを見つけてソファに座った。
彼の両側には二人の威厳のあるボディガードが威圧的に立ち、話しかけようとする多くの人々をためらわせた。
三年前、菊地秋次が危うく事故に遭いかけたことで、菊地家はより一層緊張して警戒するようになった。
だから今では菊地秋次は他のことは自由だが、必ず医療知識のあるボディガードを側に置くことになっていた。