上杉望は不満げにぶつぶつと言った。「あなたは私に連絡もくれなかったじゃない……」
彼は佐藤和音の心の中で、その千葉佳津よりも地位が低いようだった。
どう考えても、彼らはかつて「生死を共にし」、困難を乗り越えた戦友だったのに!
上杉望が運転している間、佐藤和音も助手席で暇ではなかった。
彼女は小型のノートパソコンを取り出し、膝の上に置いた。
指が慣れた様子でキーボードを叩き始めた。
上杉望は赤信号で待っている間に、佐藤和音のパソコン画面をちらりと見たが、彼には理解できない化学記号の山を目にした。
さすが名門大学の医学生だ。
「そういえば和音様、今は大学3年生になるんだよね?」
「飛び級したから、今は大学院生よ」佐藤和音は正直に答えた。
上杉望:「……」
まあ、考えてみれば当然だ。高校をまともに終えなかった人が、大学をきちんと卒業するわけがない。