実は絵里菜の言外の意味は、今は家にお金が困っていないということだった。
「い、いくら?」馬場輝は呆然として「母さんの年収が300万?」と聞いた。
馬場絵里菜は驚いている兄を見ながら頷き、「ボーナスもあるのよ」と付け加えた。
細田登美子は一日経っても昇進のことと通帳に100万円が増えたことに慣れていないようで、それらのことを忘れていた。
今、娘の分析を聞いて、細田登美子の思考が徐々に明確になってきた。将来的に立ち退き補償で一軒の家がもらえるとはいえ、息子が結婚する時にも一軒の家が必要だ。自分のこの総経理の職がいつまで続くかわからないので、年収300万円に期待を寄せるべきではない。今、余裕があるうちに、もう一軒家を買うべきだ。
そう考えると、細田登美子は一気に理解が深まり、娘がこんなにも周到に考えていたことに驚き、すぐに「絵里菜の言う通りね。今のうちに家を買わないと。立ち退きの話が出たら、不動産価格は必ず上がるわ」と頷いた。
母がそう言うのを聞いて、馬場絵里菜は母が自分の意図を理解したことを知り、内心でほっと息をついた。
一方、馬場輝は妹と母を交互に見ながら、驚いて「母さん、本当に決めたの?本当に家を買うの?」と聞いた。
細田登美子は決意を固めたように「買うわ。午後から見に行きましょう!」
昼に、馬場絵里菜は馬場輝の通帳を借り、200万円の小切手を持って銀行に行った。銀行員は14歳の少女が200万円の小切手を持ってきたことに驚いたが、鈴木強に電話で小切手の真偽を確認した後は、特に問題なく、お金は無事に馬場輝の通帳に振り込まれた。
家に帰って通帳を隠し、馬場絵里菜はもう一度昼寝をした。午後2時にアラームで起き、身支度を整えてから母と兄と一緒に家を見に出かけた。
「母さん、どの区で買いたいの?」道中、馬場絵里菜が尋ねた。
朝から家を買う決心をしてから、細田登美子は帰ってからも眠れず、心の中でわくわくしながら、多くのことを考えていた。その中には当然、どの区で買うかということも含まれていた。
「港区で買うわ!」
買うと決めたからには、一気に最も繁華な区にしよう。
母がそう言うのを聞いて、馬場絵里菜は思わず微笑んだ。港区は東京で最も大きな区で、経済が発達し、非常に繁栄している。だからこそ、将来の値上がりの可能性も最も大きい。