第82章：いとこの進藤隼人

「隼人？」馬場絵里菜は驚いて、目の前の人が自分のいとこだと一目で分かった。

進藤隼人は片足を歩道に、もう片足をペダルに乗せ、まず馬場絵里菜に向かってウインクし、そして顎を上げて言った。「姉さん、乗って。ご飯食べに行こう」

馬場絵里菜はまだ状況を把握できておらず、目はいとこの顔に釘付けになっていた。これは彼女が生まれ変わってから初めていとこに会う瞬間だった。

同世代の中で、自分の兄以外では、叔母の家のいとこと最も親しかった。前世では大学で起業に成功した時、真っ先に成績優秀ないとこをヨーロッパ留学に送り出した。彼は何年も向こうにいて、馬場絵里菜が交通事故で生まれ変わるその日まで、一度も会うことはなかった。

今、14歳の隼人が再び自分の前に現れ、馬場絵里菜の心は激しく動揺し、返事すら忘れてしまった。

「姉さん？」

進藤隼人は首を前に伸ばし、ぼーっとしている馬場絵里菜を見てまたウインクした。「どうしたの？」

馬場絵里菜はようやく我に返り、密かに感情を落ち着かせてから尋ねた。「ご飯？どこに行くの？」

「ああ」進藤隼人はゆっくりと反応し、のんびりとした口調で答えた。「母さんが、この前入院してた時に見舞いに行けなかったって。だから退院したら、家族みんなで食事しようって」

馬場絵里菜は頷いた。叔母の言う入院は、きっと自分が水に落ちた後のことだろう。

「絵里菜さん、用事があるなら行ってください。私は一人で帰りますから」高橋桃が馬場絵里菜に言った。

「うん、じゃあまた明日ね」馬場絵里菜は言いながら、すぐに隼人の自転車の後ろに乗り、高橋桃に手を振った。

進藤隼人は力強くペダルを踏み、自転車は安定して走り出した。

涼しい風が頬を撫で、鼻先には隼人の身に漂う洗濯洗剤の香りが感じられた。それは馬場絵里菜に再び不思議な非現実感を抱かせた。

馬場絵里菜は斜めにサドルに座り、道端の往来や建物がゆっくりと過ぎ去るのを見ながら、そっと頭を隼人の広い背中に寄せた。進藤隼人は少し横目で見て、口角を上げ、バニラのように純粋な笑みを浮かべた。

約30分後、二人は世田谷区のある家庭料理店の前で止まった。二家は付き合いが深く、ほとんどの場合は家で食事を作るが、たまに外食する時は、この経済的な料理店を選ぶことが多かった。

「絵里菜ちゃん、隼人くん、いらっしゃい」