第086章:新しい携帯電話

細田芝子と進藤峰は今、二人とも俯いていて、意思表示もせず、一人は涙を拭い、もう一人はため息をついていた。

進藤隼人が箸を置き、白くて幼い顔を上げて細田登美子を見つめながら、一言一言はっきりと言った。「おばさん、将来僕が成功したら、必ずおばさんに孝行するよ。」

「まあ、うちの甥っ子は何て分かり者なの。」細田登美子は顔を明るくして笑いながら言った。「私たちの隼人は将来きっと成功するわ。一流大学に入って、それから留学して、海外帰りのエリートになるのよ!」

進藤隼人は口を大きく開けて笑い、真っ白な歯を見せて、まるで小さな太陽のようだった。

こうして、この件は話が済んだことになった。細田芝子夫婦は直接同意はしなかったものの、心の中では納得していて、ただ立ち退きの時期が早く来て、このお金を早めに細田登美子に返せることを願っていた。

帰り道で、細田登美子は自転車に乗り、馬場絵里菜は後ろに座っていた。

「お母さん、今日、小父さんと手続きは済んだの?」馬場絵里菜が突然尋ねた。

細田登美子はその言葉を聞いてもすぐには答えず、しばらくしてからゆっくりと口を開いた。「済んだわ。家は私たちの名義になって、お金もすぐに渡したわ。」

馬場絵里菜はそれ以上何も言わず、ただ細田登美子の腰に手を回して、母親の背中に顔を埋めた。

彼女は母親の心の中でずっと、この家族がいつか互いを受け入れ合えることを願っていることを知っていた。そうでなければ、これほど多くの年月、これほど多くの出来事があった後では、誰だってもうこんな親戚とは付き合わないはずだった。でも母親はずっと卑屈なまま、黙々とこれらの人々のために尽くし、彼女に対して、彼らに対して実際には存在しない親愛の情を繋ぎとめようとしていた。

前世で母親は肝臓がんで亡くなった。馬場絵里菜は今でも覚えている。葬儀の時、細田家からは叔母と叔父以外、誰も来なかったことを。

だから今世では、馬場絵里菜はもう母親に我慢を強いたくなかった。

「お母さん、そのうち一緒に病院で健康診断を受けましょう。」馬場絵里菜が突然言い出した。

細田登美子は一瞬驚いて、それから笑って言った。「学校で毎年健康診断があるでしょう?どうしたの?体調が悪いの?」