第109章：一生現れるべきではなかった

細田登美子は冷たい目つきで、目の奥に秘めた憎しみを少しも隠そうとしなかった。そんな決然とした態度は馬場長生の心を深く傷つけた。

しかし彼は心に負い目があり、登美子が自分を憎むのは当然だと分かっていた。

大きな手を何度も上げかけたが、結局細田登美子に触れることはできなかった。馬場長生は心の痛みに耐えかね、ついに尋ねた。「輝は元気にしているか？あの子は...生まれたのか？男の子か女の子か？」

馬場長生は細田登美子に申し訳ない気持ちを抱えながらも、このとき彼女から目を逸らさなかった。彼女と子供のことを本当に心配していることを分かってほしかったのだ。

しかし、これらすべては細田登美子にとって笑止千万なことだった。

偽善的で吐き気がするほどだった。

「その気持ち悪い同情は止めて。見ているだけで吐き気がする」細田登美子は顎を少し上げ、冷ややかな表情で馬場長生を見つめた。「私が妊娠中にあなたが私たちを捨てた時から、子供も私も、あなたとは何の関係もなくなったのよ」

「登美子、私には事情があったんだ」馬場長生は切迫した表情を浮かべ、もがくように言った。「許してくれとは言わない。でも、君は私のことを分かっているはずだ。あの時の私の立場も分かっているはずだ。私だって君のもとを離れたくなかった...」

「でもあなたは離れたじゃない！」細田登美子は容赦なく馬場長生の言葉を遮り、自分の傷を晒し出した。「私が絵里菜を妊娠したばかりの時に、あなたは私を捨てた。輝も、まだ生まれていない娘も見捨てた。馬場長生、あなたは人間じゃない。よくも私の前に現れる顔があったわね。

十四年よ。二人の子供のことなんて一度も気にかけなかった。今日偶然私に会わなければ、馬場家には行き場を失った二人の子供がいることすら忘れていたんじゃないの？」

細田登美子の声は淡々としており、ほとんど感情の起伏がなかった。しかしそれは、むしろ彼女の心が灰のように冷え切っていることの表れであり、目の前の男に対してわずかな同情すら感じられないことを示していた。