翌日、雨上がりの東京には爽やかな香りが漂い、湿った空気が朝から人々を清々しい気分にさせていた。
馬場絵里菜が起きると、テーブルには朝食が用意されていた。家の朝食店は閉店したものの、母は毎朝早く起きて自分のために朝食を作ってくれていた。
身支度を整えた絵里菜がテーブルに着くと、細田登美子が台所からお粥を持って出てきた。絵里菜が顔を上げると、母の顔色が良くないことに気づいた。
「お母さん、具合悪いの?顔色があんまり良くないけど」絵里菜は心配そうに尋ねた。
母は今まで大変だったにもかかわらず、いつも生き生きとしていて、肌は透き通るように綺麗で、目も輝いていた。しかし今の細田登美子は目の周りがくぼみ、無視できないほどのクマがあり、全体的に元気がなく、目つきも虚ろで少しぼんやりしていた。