娘の言葉を聞いて、細田登美子は心が温かくなった。娘の言うことを考えてみると、確かにその通りだった。せっかく来たのだから、検査を受けてみるのも悪くない。自分はこの十数年、自主的に病院で検査を受けたことがなかった。クラブは毎年従業員の健康診断を実施しているが、それは簡単な検査で、決して包括的なものではなかった。
そこで頷いて言った。「そうね、お母さんも検査を受けてみましょう。体に何か小さな問題がないか見てみましょう。」
馬場絵里菜はそれを聞いて微笑み、細田登美子の腕に手を回して言った。「そうそう、これからは毎年健康診断を受けるべきよ。自分の体調をいつも把握しておかないと。」
二人とも全身検査の予約を取り、基本的な血液検査、肝機能・腎機能検査、胸部レントゲンから、より包括的なX線検査、脳検査、心臓検査まで予約した。
母娘は午前中ずっと病院の各科を回っていた。一部の検査結果はその日のうちに出たが、より複雑な検査は翌日まで結果が出なかった。
「お母さんは大丈夫だって言ったでしょう。これで安心したでしょう?」病院を出るなり、細田登美子は娘に笑顔で言った。
馬場絵里菜はただ微笑むだけで、心の中ではまだ安心できていなかった。二人は血液検査と肝機能・腎機能検査の結果しか受け取っていなかったが、腫瘍があるかどうかを知るにはX線写真を見る必要があった。
母の体が本当に大丈夫かどうかは、明日にならないとわからなかった。
午後、馬場絵里菜が学校に戻ると、隣の席が馬場依子から夏目沙耶香に変わっていることに気づいた。
「どういうこと?」馬場絵里菜は少し驚いた。昨日成績順で席替えをしたばかりなのに、午前中いなかっただけで隣の席が変わってしまったのだろうか。
夏目沙耶香は席でマニキュアを塗っていたが、声を聞いて目を上げ、馬場絵里菜が戻ってきたのを見ると手を止めた。そして馬場依子の方をちらりと見て、小声で言った。「内緒話だけど、馬場依子が席替えを申し出たんだって。今朝將先生が来て、誰が絵里菜の隣に座りたいか聞いたの。クラスでの絵里菜の評判があまり良くないのは知ってるでしょ?だから私が自ら手を挙げたの。それで今こうなってるわけ。」
言い終わると、夏目沙耶香は馬場絵里菜に向かって眉を上げた。「どう?感動した?」