車は港区の中心部にある高級マンションの前で止まった。
これは白川昼が馬場絵里菜のそばにいるために、特別に東京で購入したマンションだった。白川昼は今回東京に滞在するにあたって、他の誰も連れてこなかった。唯一、側近の山本陽介だけを伴っていた。
主従二人でこのマンションに住むには十分な広さがあった。
エレベーターは最上階に直通し、白川昼は体を横に向けて恭しく道を譲った。「門主、どうぞ」
馬場絵里菜はエレベーターを出ると、最上階には一世帯しかないことに気づき、ここが白川昼の家だと理解した。
ドアが開き、馬場絵里菜は白川昼に続いてマンションに入った。白と黒を基調としたミニマルな内装で、余計な装飾は一切なく、白川昼の雰囲気によく合っていた。
そのとき、リビングの床から天井までの窓の前で、黒い服を着た男が両手を後ろで組んで、遠くを眺めていた。