第116章:死神の医者宮原重樹

車は港区の中心部にある高級マンションの前で止まった。

これは白川昼が馬場絵里菜のそばにいるために、特別に東京で購入したマンションだった。白川昼は今回東京に滞在するにあたって、他の誰も連れてこなかった。唯一、側近の山本陽介だけを伴っていた。

主従二人でこのマンションに住むには十分な広さがあった。

エレベーターは最上階に直通し、白川昼は体を横に向けて恭しく道を譲った。「門主、どうぞ」

馬場絵里菜はエレベーターを出ると、最上階には一世帯しかないことに気づき、ここが白川昼の家だと理解した。

ドアが開き、馬場絵里菜は白川昼に続いてマンションに入った。白と黒を基調としたミニマルな内装で、余計な装飾は一切なく、白川昼の雰囲気によく合っていた。

そのとき、リビングの床から天井までの窓の前で、黒い服を着た男が両手を後ろで組んで、遠くを眺めていた。

ドアの開く音を聞いて、男はゆっくりと振り返り、凛とした厳しい表情が馬場絵里菜の目の前に現れた。

男の周りには無視できない距離感が漂っていた。冷たい雰囲気で、端正な顔立ちながら、目には鋭い光が宿り、表情は霜が降りたように冷たく、温かみは微塵も感じられなかった。一目見ただけで、誰もが彼と会話をする意欲を失うほどだった。

白川昼が言っていた人物、この人なのだろうか?

男はこのとき白川昼の方を見て、目に疑いの色を浮かべ、馬場絵里菜の身分を確認しているようだった。

白川昼はただ軽く頷くだけで、他には何も言わなかった。次の瞬間、男は突然馬場絵里菜の前まで早足で歩み寄り、馬場絵里菜が初めて白川昼に会った時と同じように、片膝をついて跪いた。

「捨仙門下、捨仙十二衛、死神の医者宮原重樹、門主にお目通り申し上げます!」

馬場絵里菜は一瞬驚き、顔に衝撃の色が浮かんだ。白川昼が十二衛の一人と連絡を取っていたとは全く予想していなかった。

「お立ちください」馬場絵里菜は我に返って急いで言った。

宮原重樹は「ありがとうございます、門主」と言って立ち上がった。

馬場絵里菜は目の前の男をもう一度じっくりと観察してから、「あなたも捨仙十二衛の一人なのですか?」と尋ねた。

宮原重樹はこの言葉を聞いて白川昼の方を見た。まるで、門主に私の身分を説明していなかったのかと問うような眼差しだった。