夜になると、軽井沢の山頂に東風が吹き始め、山頂の木々の葉が絶え間なく揺れていた。
夜に温泉に浸かったせいで、馬場絵里菜は体全体がとても軽くなったように感じた。今、彼女はバスローブを着て、部屋の窓の前で電話をかけていた。
「門主、病院の方は既に手配済みですので、ご安心ください」電話の向こうで白川昼が言った。
馬場絵里菜はそれを聞いて深いため息をつき、心の重荷が下りた。「ありがとう、白川」
この感謝の言葉は心からのものだった。彼女にとって、母の病気の問題が解決されてこそ、他のことに専念できるのだった。
しかし、その言葉を聞いた白川昼は却って恐縮した。「門主、そのようなお言葉を。これは私たちの務めでございます」
最初は白川昼、次に宮原重樹と、馬場絵里菜は彼らの過度に敬意を示す態度に慣れていなかったが、受け入れざるを得なかった。上下関係は既に彼らの心に深く根付いており、自分の一言二言で変えられるものではなかった。