皆は驚いて、急に顔を上げた。
よく見ると、馬場絵里菜がいた場所には誰もいなくなっていた。
温かい水が馬場絵里菜の滑らかな肌を伝って流れ落ち、飛び込みで体に染みた寒さがようやく和らいでいった。
シャワーの下で、馬場絵里菜は顔を少し上げ、水に打たれながら、乱れた心が徐々に落ち着いていった。
心法で身を守れたとはいえ、先ほどの出来事を思い返すと、馬場絵里菜はまだ少し怖くなった。
幸い、大事には至らなかったが、意識を失ったままの林駆のことを考えると、馬場絵里菜の心は複雑な思いに包まれた。
疲れを洗い流し、体を拭いた馬場絵里菜は、わざわざ持ち出してきた携帯電話に目を向けた。手に取ってみると、水に濡れて使えなくなっていた。
この時代の携帯電話は、どんなに高価でも防水機能はなかった。