第155章：本当に古谷始だ

背が高いという特徴から古谷始のように見えたため、馬場絵里菜は確信が持てなかった。彼は身長が190センチ近くあったことを覚えていた。

今は男の顔がぼんやりと見えるものの、前回古谷始に会った時は顔全体が豚のように腫れ上がっていたため、彼が本来どんな顔をしているのか分からなかった。

「お嬢さん」突然、男が口を開いた。その声には笑みを含んでいるようだった。

木陰から背の高い凛々しい姿が現れ、まっすぐに馬場絵里菜の前に立ち止まった。唇の端を少し上げ、悪戯っぽい笑みを浮かべながら「私が分かった？」と尋ねた。

本当に古谷始だった！

馬場絵里菜も思わず微笑みを浮かべ、軽く頷いた。「そんなに背が高いから、きっとあなただと思いました」

古谷始があまりにも背が高かったため、馬場絵里菜は顔を見上げなければならなかった。以前の顔の腫れはほぼ治っており、まだ若干の痕跡は残っているものの、明らかに大きな問題はなくなっていた。

月明かりの下で、馬場絵里菜は初めて古谷始の顔をはっきりと見ることができた。彼の顔立ちは凛々しく、古谷おじさんの面影があった。引き締まった顎、高い鼻筋、そして漆黒で輝く鷹のような目を持っていた。

生まれながらの威厳があり、人に圧迫感を与える存在感があった。

ただし、その威厳と圧迫感は馬場絵里菜の前では大分和らいでいた。

馬場絵里菜は少し意外そうに尋ねた。「どうしてここにいるんですか？」ここは自分の家の前だったため、馬場絵里菜は自分を指差しながら「私を待っていたんですか？」と聞いた。

古谷始は眉を上げて頷き、周りを見回してからゆっくりと話し始めた。「電話をしようと思ったんだけど、今日ずっと電源が切れていたから。何かあったんじゃないかと心配で、様子を見に来たんだ」

馬場絵里菜は思わずため息をついた。電話が使える時は誰も連絡してこないのに、壊れた途端に皆が電話をかけてくるなんて。

でも古谷始に会えて嬉しかった。昨日電話が壊れたと分かった時、馬場絵里菜が最初に悔やんだのは、古谷始の連絡先が電話の中にしかなかったことだった。

すぐに新しい携帯電話を取り出しながら、「前の携帯が水没して壊れちゃったんです」と説明した。

そして、携帯を古谷始に差し出しながら「もう一度番号を登録してください」と言った。