古谷始は足を止め、馬場絵里菜を見下ろして眉を上げた。「ん?」
馬場絵里菜は表情を引き締め、少し言葉を詰まらせてから、小声で言った。「お願いがあるんだけど...お兄ちゃんが行方不明なの」
「行方不明?」古谷始はそれを聞いて眉をひそめ、絵里菜の言葉が理解できないようだった。「どういうこと?」
馬場絵里菜はため息をつき、兄の件について古谷始に説明した。最後に心配そうな声で言った。「もし仕事を辞めただけなら、家に帰ってくるはずなのに、黄毛が言うには一週間前に辞めたらしいけど、この一週間、全然姿を見てないの」
古谷始は絵里菜の話を聞いて、しばらくしてからゆっくりと頷いた。「分かった。安心して、この件は俺に任せて。連絡を待っていて」
「ありがとう」馬場絵里菜は古谷始の目を見つめ、その瞬間、心が落ち着いた。