その部下は驚きの目を見開いた。馬場絵里菜がこんなにも簡単に承諾するとは思っていなかったようだ。
今時の若い娘は見た目は若いのに、随分と大胆なことをするものだな。そう思いながら、男は貪欲な目つきで馬場絵里菜を上から下まで舐めるように見た。
「お会計を済ませて!」馬場絵里菜は彼を冷ややかに一瞥し、そう言い残すと、田中勇の席の方へ歩き出した。
やって来た部下はそれを見て、急いでバーカウンターのバーテンダーに叫んだ。「勇の客だ、会計は不要!」
ここは田中勇の経営するバーだ。バーテンダーは当然何も言わず、軽く頷いただけだった。
その時、田中勇は馬場絵里菜が自分の席に向かってくるのを見て、急に活気づいた。
彼はまだ23、4歳だが、世田谷区で父親の威光を笠に着て好き放題やってきた。周りには様々なタイプの女性が絶えることなくいた。