第174章:一杯飲みに来ない?

黄髪が本当に自分を心配して注意してくれているのを感じ、馬場絵里菜はその場で頷き、彼に向かって大きな声で「ありがとう!」と言った。

黄髪はそれを聞いて安心して背を向けて去っていった。

馬場絵里菜が振り返ると、いつの間にかストロベリージュースが目の前に置かれていた。バーテンダーが馬場絵里菜に向かってどうぞという手振りをしたので、馬場絵里菜は思わず苦笑しながら首を振った。

心道、まあいいか、そもそもお酒を飲みに来たわけじゃないんだし。

しばらくすると、馬場絵里菜はバーの雰囲気に完全に慣れたようで、ジュースを手に何気なく飲んでいるように見えたが、その目は常に周囲を探っており、明らかに田中勇の姿を探していた。

バー内は薄暗く、フラッシュライトが絶え間なく点滅していたが、馬場絵里菜は心法を身につけていたため、すべての隅々まではっきりと見ることができた。

田中勇の姿は既に心に刻み込まれていた。彼は平凡な顔立ちだったが、胸のタトゥーが首まで伸びていたため、馬場絵里菜ははっきりと覚えていた。

30分が経過しても、馬場絵里菜は田中勇の姿を見つけられなかった。時計を見ると、もう10時近く、バーは既に満員状態だった。馬場絵里菜は気づいた。すべてのテーブルとVIPシートは既に埋まっており、ダンスフロア脇の最も良い位置にあるVIPシートだけが空いていた。

明らかに誰かのために予約されていたのだ。

そしてまもなく、一群の人々が堂々と入ってきた。先頭を行く男は背が高く、とても屈強で、首の横に刻まれたタトゥーが見えた。まさに田中勇その人だった。

田中勇の後ろには7、8人の若者が続いていた。彼らもみな不良っぽい雰囲気を漂わせており、背の高い者も低い者も、太った者も痩せた者もいて、みな20歳前後で、一目で真っ当な仕事をしていない若者たちだとわかった。しかし、田中勇という大木に取り入ることで、普段は金に困ることはないようだった。

馬場絵里菜は田中勇が現れた瞬間から彼を見つけていたが、ずっと会ったことのない兄の元カノは田中勇と一緒にいなかった。

一行は案の定、その空いていた席に座り、すぐにウェイターがお酒やフルーツプレートなどをテーブルいっぱいに運んできた。