馬場絵里菜は井上裕人の手から自分の手を引き抜き、周りの人々が怪物を見るような視線を感じたが、まるで気にも留めず、人々の視線を無視して酒場の出口へと向かった。
見物人たちは彼女を避けるように慌てて道を開けたが、馬場絵里菜が突然立ち止まった。
周囲の人々は息を呑んだ。この'鬼女'がまた暴れ出すと思ったが、馬場絵里菜は金髪の男の傍に戻り、無表情で彼の袖を掴み、まだ状況を把握できていない金髪の男を連れて酒場を後にした。
馬場絵里菜が出て行った瞬間、酒場内の重苦しい空気が一気に消え、この事件と無関係な客たちまでもが思わずため息をついた。
「やべぇ、あの女ヤバすぎだろ」
「手加減なしだな。誰かが止めに入らなかったら、人が死んでたかもしれねぇ」
「度胸あるな。どんなバックグラウンドだ?世田谷区で田中勇に手を出すなんて!」