第179話:行こう、私の家へ

その時、スターライトバーから二つ角を曲がったところの屋台。

鍋から湯気が立ち上り、元宝ほどの大きさのワンタンが次々と茹で上がり、パクチーと干しエビを振りかけ、たっぷりの自家製ラー油をかけると、思わず涎が出てくる。

屋台には二、三組の客がいて、その中の一組が馬場絵里菜だった。

バーを出て、夜風に当たると、自分の拳で血まみれにした顔を思い出し、馬場絵里菜は胃が激しくむかつき、電柱に寄りかかって止めどなく吐き続けた。

バーの中で暗い表情で容赦なく暴力を振るった人物は姿を消し、完全に冷静を取り戻した馬場絵里菜は、再びあの穏やかな表情の少女に戻っていた。

山本陽介が作った夕食を全て吐き出してしまい、吐き終わった瞬間、お腹が空っぽになって、少し空腹を感じた。

熱々のワンタンを何個か立て続けに食べ、馬場絵里菜は目を上げ、血の気のない金髪の男と、彼の前の手つかずのワンタンを見た。

「どうして食べないの?」馬場絵里菜は淡々とした口調で、軽く尋ねた。

金髪の男:「……」

お姉さん、今この状況で食事ができると思いますか?

あなたは悪魔ですか?

この時、金髪の男はもう馬場絵里菜を「お嬢さん」なんて言葉で見ることはできなかった。先ほどの出来事が悪夢のように頭の中から離れない。馬場絵里菜が田中勇に手を下した時の表情は、死神が命を刈り取るかのように背筋が凍るものだった。今でも足がガクガクしている。

どうやってバーを出たのかさえ覚えていない。気がついた時には、ここで馬場絵里菜がワンタンを食べるのを見ていた。

「おい!」金髪の男が反応しないのを見て、馬場絵里菜は動作を止めて声をかけた。確かに自分は少し手加減を忘れたかもしれないが、この金髪の男がここまで怯えるほどではないだろう?

こういった娯楽施設で働いていれば、喧嘩や殴り合いなんて日常茶飯事じゃないのか?

実は相手が怯えているのは、馬場絵里菜の手加減の問題ではなく、あの時の彼女の全体的な様子のせいだったのだ。

金髪の男は驚いて、体を震わせながらようやく我に返った。

馬場絵里菜はその様子を見て思わず笑い出し、金髪の男に向かって言った:「ぼーっとしてないで、話があるなら食事が終わってからにしましょう。」

金髪の男は断る勇気もなく、震える手でスプーンを取り、顔を上げる勇気もないまま食べ始めた。