第180章:金髪、豊田拓海

金髪の少年はその言葉を聞いて、椅子から滑り落ちそうになった。

「い、いいです……」金髪の少年は震える心で、明らかに馬場絵里菜を悪魔のような存在として見ていた。

馬場絵里菜は目を転がし、心の中で「こんなに臆病なのに、さっきは私を守ろうとして飛び出してきたなんて」と思った。

しかし、だからこそ、馬場絵里菜は彼を見捨てるわけにはいかなかった。

「ぐずぐずしないで、私について来なさい」馬場絵里菜は無駄話をする気がなく、金髪の少年の服を引っ張って路上のタクシーに乗り込んだ。

道中で馬場絵里菜は、金髪の少年の本名が豊田拓海で、東京の西花町出身の17歳、まだ未成年だということを知った。

若くして働きに出ているということは、家庭環境が良くないに違いない。しかし、馬場絵里菜を驚かせたのは、豊田拓海の家庭環境が自分の家とあまりにも似ていることだった。

豊田拓海は父親を早くに亡くし、14歳の妹がいて、母親一人で兄妹を育ててきた。

経済的な圧迫が大きく、一人しか学校に通わせられないため、豊田拓海は自分が勉強には向いていないと判断し、成績優秀な妹に機会を譲り、一人で東京に出て働いて家計を助けていた。

そして彼の妹は今、西花町の高校で馬場絵里菜と同じ高校1年生だった。

今回、自分と田中勇のトラブルに巻き込まれたせいで、スターライトバーの仕事は確実に続けられなくなった。そのため馬場絵里菜は彼に新しい仕事を探してあげようと考えていたが、具体的に何をさせるかはまだ決めていなかった。

現在、母親が入院中で、兄が洗面用具と衣類を持って付き添っているため、家には彼女一人しかいない。そのため馬場絵里菜は豊田拓海を家に連れて帰り、兄の部屋に一時的に泊まらせることにした。

あの時、自分を守るために飛び出してきた彼の行動から、悪意のある人間ではないと分かっていたので、馬場絵里菜は安心していた。

一方、豊田拓海は悪意どころか、馬場絵里菜に近づくことさえ恐れていた。

家に着くと、馬場絵里菜は豊田拓海を馬場輝の部屋に案内した。「これが兄の部屋よ。しばらくは帰って来ないから、遠慮なく使って。仕事のことは私が誰かに頼んで手配するから、心配しないで」