馬場絵里菜は少し意外に思った。豊田拓海がこんなに早く起きて、彼女のために朝食を用意するとは思わなかったのだ。
自分のせいで彼が仕事を失ったのだから、補償されるべきは豊田拓海の方のはずだ。
お粥に、ゆで卵、そして冷蔵庫に母が漬けた漬物。
豊田拓海への好感度が更に上がった。やはり貧しい家庭の子は早くから自立するものだと心道した。金髪に染めて不良っぽく見えるが、意外と繊細で気が利いて、生活能力も高いのだ。
「一緒に食べましょう」馬場絵里菜は豊田拓海に優しく微笑みかけた。表情は自然で穏やかだった。
一晩経って、豊田拓海は馬場絵里菜に対する恐怖心が薄れていた。ただ、今は馬場絵里菜の家に住まわせてもらっているので、何もせずにいるわけにはいかないと感じていた。
だからこそ、目の前の朝食があるのだ。