第182章:病院の噂話

馬場絵里菜がなぜそれほどの自信を持っているのか分からなかったが、彼女の落ち着いた横顔を見て、豊田拓海は何か言いかけて止め、結局言葉を飲み込んだ。

結局これは二言三言で解決できる問題ではなく、心配ではあったものの、具体的な解決策もなかった。

第一病院。

細田登美子が入院してからもう一週間近くが経っていた。この数日間は手術前の通常検査を行い、宮原重樹は毎日時間通りに病室を訪れ、細田登美子の状態を確認していた。そして、病院の腫瘍外科に突然赴任してきた首席専門医について、院内でも話題になっていた。

宮原重樹は冷たい表情で病院の廊下を足早に通り過ぎていった。白衣を身にまとい、それだけで神聖で侵すべからざる雰囲気を醸し出していた。五メートル以内の温度が急降下したかのように、彼に夢中になっている病院の看護師たちも遠くから眺めるだけで、積極的に近づいて声をかける勇気はなかった。

この時、後ろには二人の若い看護師が宮原重樹の後ろ姿を見つめ、目をハートマークにして、今にも気を失いそうな様子だった。

看護師A:「渡辺ドクター、かっこよくて冷たくて、大好き」

看護師B:「若くしてがん外科の特別招聘専門医になるなんて、本当にすごいわ」

看護師A:「そうよね、真面目な姿がとても魅力的」

……

これらは、看護師たちが宮原重樹を見かけた時の日常的な会話に過ぎなかった。それ以外にも、宮原重樹についてはもう一つの噂が流れていた。

上層部は宮原重樹を腫瘍外科の特別招聘専門医として紹介しただけだが、この若くて厳かな表情の渡辺博士は、病院に来てすでに一週間以上経つのに、たった一人の患者しか診ていなかった。

確かにその患者は肝臓腫瘍と診断されていたが、病院の専門医として一人だけを診るというのは、どう考えてもおかしかった。

たちまち病院内で噂が広がり、好奇心から細田登美子のカルテを密かに覗き見る者も出てきた。

そうすると、人々はますます理解に苦しんだ。細田登美子の現在のがん細胞の転移状況から見て、完治はほぼ不可能だったからだ。渡辺博士がこれほど熱心に、せいぜい数年しか持たない患者のために尽力するのは、本当に不可解だった。