「渡辺先生」
宮原重樹を見かけた馬場輝は急いで立ち上がって挨拶し、少し緊張した様子で尋ねた。「検査結果はどうでしたか?母の手術はいつできますか?」
細田登美子も不安げに見つめる中、宮原重樹は無表情で軽く頷いた。「結果に問題はありません。明日手術を行います」
「よかった」馬場輝はほっと安堵の息を吐き、細田登美子に向かって安心したような笑顔を見せた。
細田登美子も心を落ち着かせ、宮原重樹を見て言った。「渡辺先生、この数日間ご苦労様でした」
病院内の噂は広まりやすく、細田登美子は聞きたくなくても耳に入ってきた。渡辺先生は彼女以外の患者の診察を一切受け付けていないという。理由は分からないが、細田登美子は心の底から宮原重樹に感謝していた。
「どういたしまして」宮原重樹は相変わらず表情を変えず、社交辞令さえも距離を感じさせた。