目の前の林駆の冷たい態度と馬場依子の問いかけに、吉田清水と鈴木玲美は顔を見合わせ、どう応えればいいのか分からなかった。
馬場依子は明らかに二人に多くを語らせるつもりはなく、すぐに申し訳なさそうな表情で林駆に向かって言った。「ごめんなさい、林駆くん。私も何気なく話しただけで、他の人の耳に入るとは思っていなかったの。」
馬場依子のそんな作り笑いを見て、普段表情の少ない高遠晴までが眉をひそめずにはいられなかった。
あの日、馬場依子が贈った万年筆はかなり高価なもので、林駆はその場で断ったのだが、周りの勧めで仕方なく受け取ることになった。それが今、馬場依子が林駆を揺さぶる材料になってしまっていた。
この馬場依子という子は、若くして計算高い性格をしているものだ。
そして馬場依子のこの一言で、確かに林駆に高価な万年筆を贈ったことが証明された。