第198章:人が卑しくなれば無敵

まさに一寸の虫にも五分の魂とはこのことだ。

馬場依子は本当に自分の言葉通りになり、譲歩するどころか、被害者のような態度で慌てて逃げ出した。

こうして、林駆は弁解のしようがない状況に追い込まれた。もし二人に何の関係もないのなら、なぜ馬場依子がこれほど心を痛めているのだろうか?

これこそが馬場依子の巧妙なところだった。

事態が曖昧であればあるほど、林駆は説明できなくなる。彼女が傷つき悲しむ様子を見せれば見せるほど、周りの人々は彼女に同情するようになる。

吉田清水と鈴木玲美もその場で失望したような目で林駆を見つめ、すぐに馬場依子を追いかけて行った。

残りの人々も大半が非難の目を向け、一部の人々だけが他人事のように、ただの見物人として立ち尽くしていた。

この時の林駆の心は、行き止まりの十字路のように、胸に詰まった思いが上にも下にも行き場を失っていた。