この年頃の子供は、どんなに腹黒くても、結局は子供で、遊びに行くのが好きなものだ。
馬場依子は旅行に行くと聞いて、瞬く間に笑顔になった。
「海外に行きたい、オーストラリアでもヨーロッパでもいい!」と馬場依子は笑顔で言った。
「いいわ」と橋本好美は微笑んで、馬場長生に向かって言った。「あなた、時間があれば、一緒に行きましょう?」
馬場長生が断ろうとした時、馬場依子が寄り添ってきて、甘えた声で言った。「パパ、一緒に行こうよ!私たち、ずっと一緒に遊びに行ってないでしょう。弟も知ったら喜ぶと思う!」
娘の顔を見ながら、妻と一緒に過ごす時間も久しぶりだと思い、ちょうど会社も忙しくない時期で、二人の子供も休みだ。この機会を逃したら、次はいつ一緒に出かけられるかわからない。
心が和らいで、馬場長生は頷いた。「わかった、パパも一緒に行くよ。家族みんなで出かけよう。」
「パパ大好き!」馬場依子は喜びに満ちた表情で、学校での不快な出来事も一時的に忘れた。
……
翌日の朝、馬場依子が教学棟に入ろうとした時、声をかけられた。
振り返ると、馬場絵里菜が廊下の窓際に寄りかかり、冷ややかな表情で彼女を見ていた。
馬場依子は心の中で驚いたが、表情には特に感情を表さず、いつものように親しみやすい様子で「馬場絵里菜、私を呼んだの?」と言った。
馬場絵里菜は軽く頷いて「少し話があるんだけど」と言った。
周りには行き交う生徒たちがいて、馬場依子を見ると本能的に二度見する。学校の注目の的だからだ。みんなの視線の中で、馬場依子も断りづらかったが、馬場絵里菜の無表情な顔を見ていると、林駆のことで来たのだろうと感じた。
断らなかったものの、頷きもせずに「何の用?」と聞き返した。
明らかに馬場絵里菜の「二人で話したい」という意図を無視していた。
馬場絵里菜は心の中で冷笑し、表面上は軽く口角を上げて「階段教室で話しましょう」と言った。
そう言うと、馬場依子の意思など関係なく、彼女の手首を掴んで廊下の奥にある階段教室へと向かった。
馬場依子は心の中で不安を感じ、柔弱な演技をして泣き叫ぼうとした時、馬場絵里菜の冷たい声が耳元で響いた。「第二中学校で一番底辺なのは私よ。演技するなら私の方」
馬場依子は「……」