第209話:手に入らないなら、壊してやる

馬場絵里菜は微笑んで、表情を変えずに馬場依子を見つめながら静かに言った。「あなたが何をしたいのか、知りたいわね」

馬場絵里菜は馬場依子の考え方がずっと理解できなかった。林駆が不在の間に波風を立て、噂を広めて誰もが知るところとなり、みんなに自分と林駆が付き合っていると信じ込ませた。

しかし嘘は所詮嘘でしかない。

林駆はいずれ学校に戻ってくる。馬場依子が一生独り芝居を続けることはできない。

林駆は彼女のことが好きではないから、当然彼女に協力するはずもない。その時になって真実が明らかになれば、恥をかくのは彼女だけだ。

だから……この馬場依子は一体何を考えているのだろう?

馬場絵里菜のような繊細な人でさえ、この時は困惑していた。なぜなら馬場依子の行動は、彼女の目には明らかに自分で自分の首を絞めているようにしか見えなかったからだ。

馬場絵里菜は自分の表情を隠そうとはしなかった。馬場依子は馬場絵里菜の目を見て、彼女の心の中の疑問を理解した。

その時、目に葛藤の色が浮かび、馬場依子は初めて本当のことを話した。「私、誤解していたの。林駆が私のことを好きだと思っていた」

その一言で、馬場絵里菜の中で全てが明らかになった。

心の中の疑問符だらけのもつれも、一気に解けた。

馬場絵里菜は言った。「だから世間の噂を放置して、林駆が自分のことを好きだと確信して、みんなの後押しを利用して、林駆に早く告白させようとしたの?」

馬場依子は目を上げて馬場絵里菜を一瞥したが、何も言わなかった。

それは黙認したということだ。

「何を誤解したの?」馬場絵里菜は興味深そうに眉をひそめた。馬場依子が転校してきて一ヶ月も経っていないのに、林駆と一緒にいる時も皆がいつも一緒だったのに、林駆が馬場依子のことを好きだという様子は全く見られなかったはずだ。

馬場依子は唇を噛んだ。口にするのは恥ずかしかったが、今は馬場絵里菜に見破られて後には引けない。言わずにいても意味がない。

「あの時、別荘で火事があって、林駆が万年筆を取りに四階に戻ったの。それを私、偶然聞いたの」

馬場絵里菜は「……」

林駆の誕生日の時、彼女と馬場依子はプレゼントが被って、二人とも万年筆を贈った。

だから馬場依子は誤解したのか。林駆が取りに戻ったのは彼女が贈った万年筆だと?