「お前……」
馬場依子は驚きと怒りで、馬場絵里菜の手にある白いボイスレコーダーを見つめ、一瞬言葉を失った。
普段は寡黙な馬場絵里菜は、夏目沙耶香と友達になっても目立つことはなかった。馬場依子は、まさか馬場絵里菜の罠にはまるとは思いもしなかった。
胸が詰まるような怒りを感じながら、大きな目で馬場絵里菜を睨みつけた。「さっきのは全部演技だったのね!」
驚きや意外さ、そして柔らかな態度で自分の感情に寄り添うような振る舞い。
全てが嘘だった。彼女はこんなにも巧みに演技をし、自分は馬場絵里菜に騙されていたのだ!
しかし馬場絵里菜は軽く唇を歪め、意味深な笑みを浮かべた。「お互い様でしょう?あなたがそんなに演技好きなら、相手役も必要でしょう?」
そう言いながら、尋ねるような目つきで「私の演技、まあまあだったでしょう?」