第222章:撮影現場に入る(2)

撮影現場に着くと、夏目沙耶香が先に車から降りた。

豊田拓海は車の中で素早く服を着替えてから、ドアを開けて降りてきた。

人は見た目が大事というのは本当だった。夏目沙耶香は彼のために黒のカジュアルスーツを買った。中にはシャツではなく白のTシャツを合わせ、フォーマルすぎず、かといってカジュアルすぎない。黒は豊田拓海に落ち着きを与え、笑っていない時は本当にマネージャーらしく見えた。

豊田拓海はこのような服を着たことがなく、見た目は良いと思いつつも、どこか違和感があり、慣れない様子が顔に出ていた。

幸い夏目沙耶香は満足そうで、豊田拓海に向かって笑顔で頷いた。

青春ドラマなので、最初のシーンは東京のとあるマンションで撮影することになっていた。

スタッフは大勢いて、夏目沙耶香が言った通り、誰も他人を見つめる時間はなく、各部署の人々は撮影開始の準備に追われていた。

豊田拓海はその様子を見て、緊張が少し和らいだ。

「沙耶香!」

その時、首からスタッフパスを下げた短髪の女性が夏目沙耶香を見つけ、急いで手を振った。

その人物は、このドラマの助監督の葉山葵だった。オーディションの時に夏目沙耶香に会っており、細田監督が指名した女三番手だったため、葉山葵は夏目沙耶香の印象が強く残っていた。

最も重要なのは、夏目沙耶香が夏目グループのお嬢様で、夏目グループがこのドラマの投資家だということだった。

夏目沙耶香は葉山葵を見るとすぐに笑顔で近づいていき、豊田拓海も黙って素早く後を追った。

「細田監督はまだ来ていないから、先に前の控室で休んでいてね。」葉山葵は気の荒い監督たちとは違い、優しく話しかけ、気遣うように「お昼は食べた?」と尋ねた。

「はい、ありがとうございます、葉山さん。」夏目沙耶香は笑顔で答えた。

葉山葵は微笑んで「どういたしまして。今日の最初のシーンは午後3時か4時くらいになるから、焦る必要はないわ。先輩たちの演技を見学してみるといいわよ。」

夏目沙耶香は軽く頷き、忙しい現場を何気なく見渡してから、慎重に尋ねた。「葉山さん、新田愛美さんは来ていますか?」

「来ているわ。でも彼女はその地位にふさわしい専用の控室があるから、撮影が始まるまでは会えないでしょうね。」葉山葵は言って、夏目沙耶香の肩を軽く叩いた。「じゃあ、控室に行ってね。私は仕事に戻るわ。」