撮影現場に着くと、夏目沙耶香が先に車から降りた。
豊田拓海は車の中で素早く服を着替えてから、ドアを開けて降りてきた。
人は見た目が大事というのは本当だった。夏目沙耶香は彼のために黒のカジュアルスーツを買った。中にはシャツではなく白のTシャツを合わせ、フォーマルすぎず、かといってカジュアルすぎない。黒は豊田拓海に落ち着きを与え、笑っていない時は本当にマネージャーらしく見えた。
豊田拓海はこのような服を着たことがなく、見た目は良いと思いつつも、どこか違和感があり、慣れない様子が顔に出ていた。
幸い夏目沙耶香は満足そうで、豊田拓海に向かって笑顔で頷いた。
青春ドラマなので、最初のシーンは東京のとあるマンションで撮影することになっていた。
スタッフは大勢いて、夏目沙耶香が言った通り、誰も他人を見つめる時間はなく、各部署の人々は撮影開始の準備に追われていた。