部屋に戻ると、馬場絵里菜は持ってきた服を取り出してクローゼットに掛け、カーテンを閉めてバスルームに入った。
浴槽にお湯を満たし、ホテルで用意されていたバスオイルを手に取って香りを確かめた。
ふんわりとしたジャスミンの香り。馬場絵里菜は微笑んで、数滴を浴槽に垂らした。
バスローブを脱ぎ、片足を浴槽に入れて湯加減を確かめてから、そっと全身を沈めていった。
湯気が立ち込め、すぐにバスルーム全体が朦朧としてきた。湯加減は絶妙で、馬場絵里菜は気持ちよさそうに目を閉じ、深いため息をつくと、一日の疲れが一気に半分ほど消えていった。
この心地よい時間は、前世の記憶を呼び覚ました。京都の不動産業界である程度の成功を収めた後、眺めの良い高級マンションを購入し、忙しい一日の後、帰宅するとまず最初にすることは湯船に浸かることだった。お風呂は疲れを癒すだけでなく、瞑想や思考の時間にもなった。