しかし、馬場絵里菜の充実した精神状態と比べると、進藤隼人の白い顔には濃い隈が浮かび、目は虚ろで、疲れた様子で足取りもふらついており、一晩中眠れなかったように見えた。
「おはよう、姉さん」
進藤隼人は精一杯元気を振り絞って馬場絵里菜に挨拶したが、まるでいつ眠りに落ちてもおかしくない様子だった。
馬場絵里菜は一瞬驚き、近寄って心配そうに尋ねた。「どうしたの?よく眠れなかったの?」
進藤隼人は素直に頷いたが、その答えは馬場絵里菜を思わず笑わせるものだった。
彼は口を尖らせ、つぶやくように言った。「ベッドが気持ちよすぎて、逆に眠れなかったんです」
実家のベッドは全て板床で、布団を敷いても硬かった。こんなに柔らかいベッドで寝るのは初めてで、まるで雲の上に寝ているようで、とても気持ちよかったけれど、慣れなかった。
そのため、進藤隼人はほとんど一晩中眠れなかったのだ。
馬場絵里菜は軽く笑いながらも、愛情を込めて進藤隼人の柔らかい髪を撫でた。「朝食の後で少し仮眠を取ったら?」
進藤隼人は急いで首を振った。「いいえ、マカオに来てまで寝てる時間なんてないです。夜帰ってから寝ます」
「眠くないの?」馬場絵里菜が尋ねた。
進藤隼人はまた首を振った。「眠くないです。全然眠くありません」
馬場絵里菜は困ったように微笑んだ。隼人が自分のせいで他の人に迷惑をかけることを心配しているのは分かっていた。
まあいいか、昼間たくさん寝たら夜また眠れなくなるだろうし、馬場絵里菜はそれ以上何も言わなかった。
レストランは最上階にあり、朝食はビュッフェ形式で、世界各国の料理が揃っていて、全て丁寧に陳列され、客が自由に選べるようになっていた。
白川昼と山本陽介が先にレストランに着いており、馬場絵里菜と隼人がレストランに入ると、窓際の席で既に食事を始めている二人の姿がすぐに目に入った。
トレーを手に取り、馬場絵里菜は隼人を連れて料理を取りに行った。
「姉さん、これ全部好きなだけ食べていいんですか?」
進藤隼人は初めてビュッフェを経験し、こんなにたくさんの美味しそうな料理を見るのも初めてで、その半分以上は何か分からないものだったが、見ただけで美味しそうだった。