白川昼は頷いて言った。「チケットは買えたけど、エコノミークラスしか残ってなかったよ。ゴールデンウィークで旅行客が多いから」
そう言って、白川昼は付け加えた。「でも心配いらない。山本がエコノミーに座る」
馬場絵里菜はそれを聞いて思わず苦笑いし、山本陽介に同情の眼差しを向けた。「ごめんね」
山本陽介は'慣れてる'という表情を浮かべた。「気にしないよ」
羽田空港は日本第三の空港で、敷地面積が非常に広く、壮大な建造物だ。世界中に路線が張り巡らされており、東京の今日の経済的地位を築く上で、この国際空港の果たした役割は計り知れない。
空き時間を利用して、進藤隼人は馬場絵里菜の側に寄って小声で尋ねた。「姉さん、この人たち誰?」
さっき彼らが自分の姉をボスと呼んでいたのを聞いた気がしたが、進藤隼人は確信が持てず、聞き間違いだと思うことにした。
「ATMよ」と馬場絵里菜は適当に答えた。
進藤隼人は「……」
進藤隼人の可愛らしい困惑した表情を見て、馬場絵里菜はこれ以上からかうのを控えめにして、説明を始めた。「細田梓時が神戸に行くのを羨ましがる必要はないわ。お姉ちゃんがマカオに連れて行ってあげるから」
「マカオ??」進藤隼人は驚きと喜びを隠せない様子で、信じられないという表情を浮かべた。「本当?」
馬場絵里菜は軽く笑って、前方を顎でしゃくりながら言った。「どう思う?」
進藤隼人は馬場絵里菜の視線の先を見ると、近くの自動ドアに'香港・マカオ・台湾出発'と書かれているのが見えた。
本当にマカオに行くの?
目を輝かせながら、進藤隼人は興奮を抑えきれない様子だったが、あまり大げさに表現しないよう気を付けながら、拳を握りしめて興奮した表情を浮かべていた。
待合室に入ると、搭乗までまだ時間があったので、馬場絵里菜は進藤隼人を連れて座る場所を探した。
ところが、椅子に腰を下ろそうとした瞬間、疑問の声が投げかけられた。「馬場絵里菜?進藤隼人?」
見なくても誰の声かわかった馬場絵里菜は、容赦なく目を回した。
振り返ると、案の定、少し離れたところに細田梓時が立っており、その隣にいる人物も馬場絵里菜を驚いた表情で見つめていた。それは叔父の細田仲男だった。
「おじさん……」
隼人は小声でつぶやき、恐る恐る馬場絵里菜の方を見た。