第247話：私が行く

井上裕人は今日、黒のスリムなスーツに白いシャツを着て、襟元には濃紺の蝶ネクタイを合わせていた。

短めの前髪が、彫刻のように整った彼の顔立ちに柔らかさを添え、何気ない仕草の中にも、目が離せないような傲慢さと優雅さが漂っていた。

馬場絵里菜が初めて彼に会った時と同じように、この男の持つ雰囲気は相反するものでありながら、不調和ではなく、全く異なる二つの気質が彼の中で見事に表現されていた。

ストレートフラッシュの手札で、井上裕人は再び一局を制した。数千万円のチップが目の前に積まれたが、彼の表情は変わらず、まるでどれだけの金額でも彼の目には入らないかのようだった。

「井上さん、今日は運がいいですね。」

同じテーブルのプレイヤーの中に明らかに彼を知っている者がいて、笑いながら声をかけた。